キスを繰り返しだいぶ大人しくなったルカを見下ろしながら、既に上着が取り払われた胸元へ、今度は堂々と手を触れさせた。
 ルカは触った瞬間ぴくりと反応したが、その後は無言のままこちらの手つきを眺めている。その唇は、何も漏らすまいとばかりに閉じられていた。
「……っあ」
 チューブトップをずらして直に触れる。大きいわけでもないが殊更小さいわけでもない膨らみ。手の中に収めたそれを、形を探るようにして緩やかに揉みしだく。
 続けていくうちに、ルカの頬が次第に上気していくのがわかった。
「そういえばルカ、さっきおかしなこと言ってたよな」
「っ、……え?」
「触るほど大きさもない、とか」
 さんざん自分の手の形に馴染ませたそれを、気持ち強めに、引っ張るようにして握った。
「ぅんっ!」
「ほら、おかしいよな? ルカの胸はちゃんとあるし、それにこんなに――」
「んひゃ、……ぁっ……!」
 柔らかく弾力のある肌の中で、一際固くなったそこを指の間に挟んだ。きゅっ、と力を入れる度にルカの口から甘い声が飛び出してくる。
「やっ、あ……っ、やだ、そこ、ばっか……り……っ」
「嫌か?」
「ぃ、いやって……言うか……っあ、だっ、だってぇ……っ」
「だって、何?」
 手は休めないまま、何事もなかったかのように先を促す。
「ちょっと痛、っし……で、でも……んぅっ、く、クロアのっ、手、が……ぁっ」
 そこから先は言いにくいのか、ルカはいやいやをするように力なく首を振るだけだ。
 仕方ないので、やはり手はそのままに、口元に耳を寄せてみる。ルカは随分と間を空けてから、どこか自棄っぽく続けた。
「――く、クロアの、手が、え、えっちだからぁっ……」
「……」
 意味がよくわからない。
 まあ、とりあえず嫌ではないことはわかったような気はする。
「……っ、あ……」
 手の動きを止めただけでなく、胸から手を外した。
 すると戸惑ったような瞳に見上げられる。押せば退くくせに退けば追いすがってくるのは、そろそろ自覚なり意識なりして欲しいような欲しくないような。
 とりあえず、ルカを安心させようと表情を緩めた。
「まあ、つまり」
 ルカの顔に目一杯近づき、瞳を覗き込みながら訊く。
「嫌じゃないけど、手がよくないってことだよな?」
「えっ、あっあの、べ、別にそういうわけでもないような……ていうかクロア、なんか目が笑ってないんだけど……」
「そうか? 気のせいだろ」
「あのぅ、クロア、何……っえ、あ……っ、ん!」
 聞きたいことだけ聞いて――そのまま、先ほどまでさんざん手でこねくり回していた片側を、ぱくりと口に含んだ。
 残りの片方にはもちろん手を添えて、お遊び程度に弄ぶ。
「っ、ひぅ……っは、や、んぅっ」
 舌先で突く、輪郭をなぞる、吸い上げる。一つ一つの行為に、ルカはわりかし律儀な反応を返してくる。
 ルカの手がこちらの頭に添えられる。どうやら押し返そうとしているようだが、全く意味をなさない。
「は、あぁ、だ、だめ……っ、だよぅ……っ」
 こんなに固くしてるのに? とばかりに、先端を甘噛みしてやる。
「っちょ、か、噛まないでよぅ……!」
 そんな震える声で抗議されても。いいぞもっとやれと言われているとしか思えないのは、俺だけじゃないと思うんだが。
 まあ、同意を求めたところで、自分以外にこんなルカを見せたり聞かせたりするわけにいかないし、結局は俺の独りよがりってことになるんだろうな。
(……でも、悪いのは俺じゃないよな)
 悪いのは全部ルカだ。いちいち可愛いのは元より、無駄に無防備で無意識で無自覚なあたりとかが、特に。

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