息を荒げてくったりとするルカを優しく起こしてやり、ソファの背もたれに深く寄りかからせた。
 力の入りきらない両足の膝あたりに手をかけて、おもむろに開いていく。
「……っ」
 ルカは何一つ抵抗することなく、ただぼんやりとこちらのすることを見つめている。
「ルカ」
 声をかけると、ルカは今更のようにびくりと体を強張らせた。そして、そのことでルカ自身も動揺してしまったらしい。
「ぁ、……ぇと」
 ふらふらと視線をさ迷わせるルカの顔を覗き込むようにして、唇を重ねる。触れる時は優しく、そこから先はやや強引に。
「んぅ、ふ……っ、ぅ」
 顔を離せば、とろんとした目のルカがそこにいた。
 一気に何かのスイッチが入りそうになったが、あえてそれを押し止めるべく、全く関係ないことを告げることにする。
 ぐい、と開いた足の間に体を割り込ませながら、ルカ、と呼びかけて意識を向けさせる。
「大声出すんじゃなかったっけ?」
「……ぇ、えっ、あ」
 ルカが慌て出す前に、さらに付け加える。
「それとも、こんなんじゃ足りないってことかな、ルカの言う「えっちなこと」って」
「ちがっ……んぅ、むー!」
 ひとしきり無駄な抵抗を続けたルカはやがて大人しくなり、恨めしそうな視線だけを向けてくるようになった。
 それでも、可否を問えば恥ずかしそうに俯いて、うん、と小さく頷くのだ。
 ――たまったものではない、そう思う。
「ぁ……っ」
 既に準備はできているそこに、自身をゆっくりとあてがった。最後にもう一度、いいかと尋ねる。こくり、とルカの首が縦に動いた。
 体勢と位置を調整して、一気に前へと押し進めていく。
「っは、あぅ……っ!」
 若干のきつさは、しばらく肌を触れ合わせていなかったせいだろうか。ルカの顔が苦しそうに歪むが、そのまま強引に奥まで挿し込んだ。
 じりじりと押し広げて慣らすのも、どんどんと繰り返すことで慣らすのも、今のルカにとってはそう変わらないだろう――例によって、経験則は語る。
「は、ぁ――っえ、やっ、まっ……て、えっ」
 間髪入れずに引き抜き、ルカの体をソファに押し付けるようにして、とろとろに熱いそこへと打ち付ける。
 卑猥な水音とルカの悲鳴、そこに自分の呼気音が混ざり合って、室内に静かに響く。
「やっあ、は、げし……ぃ、よぅ……っ!」
 わかっている。そんなことは、わかってやっている。
 思っていた以上に高いルカの熱にあてられて、応答を返す余裕もない。ルカ、と呟くので精一杯だ。
 高くて甘い悲鳴が鼓膜を揺らし、それをもっと聞きたくてルカを揺さぶる。
(……っ、しまった)
 人を呼び寄せる程の大きさではないだろうが、それでも、ルカの口からはそれなりの音量が漏れている。
 今のようなことを繰り返していれば、いつかは部屋の外に気付かれるような音量になってしまう――かもしれない。
「あっや、ぁうっ、んぅ――!?」
 奥を突いた勢いのまま、ルカの唇を塞ぎにかかった。ぬるり、と舌を絡めていくと、ルカの舌が不器用に反応を返した。
 深く繋がった口を支点に、細い両肩をソファの生地へ押し付け、ルカの中へと這入り込む。
 苦しくなって息継ぎをすれば、互いの口を細い糸が伝う。それが途切れないうちに再び唇を重ね合わせて、ルカの全てを貪っていく。
「んぅ、ふ、んむ……っふ、んん……!」
 既にルカの背中の半分はソファの座面に押し付けられる形になっていた。
 もっと奥へ、と身体を動かし続けていた結果なのだが、さすがにこれ以上体位を変えるのは無理だろう。俺の限界的に考えて。
 それと、やはり許可もなしに中へ出すわけにもいかないしな。
「っは、……ルカ、そろそろ――っ?」
 腰回りに奇妙な感触が走った。反射的に目をやると、細くてしなやかな足が二本、緩やかに力なく絡み付いている。
 驚きに改めて見下ろした先には、悩ましいまでに蕩けた表情のルカが、えへ、と妖艶な笑みを浮かべていた。
「へ、へいき……だか、ら」
 そこでいいかげん確信した。
 何も「えっち」なのは俺だけじゃなくて、ルカもなんだと。
「……ルカ」
「ぁ、クロア……っん、んん――っ」
 引きずり倒すみたいにして、ルカを完全にソファへと押し倒す。
 今度は思いっきり体重をかけて、ルカの中へと自分を没頭させていく。
 お互いの熱で溶けて一つに混ざり合えるのではないか。そのぐらいひどく熱かった。繋がり合う身体と、求め合う心、その両方が。
 そうして、ぞくり――背筋を何かが走り抜けたのは、たぶんほぼ同時だったのだろう。
「っあ、ぁひっ、ぃぅ――……っ!」
「ぅく……っ」
 全てを堪えきって、呼吸を整えながら、組み敷いた相手を見やる。
 不安定な息づかいと、声にならない声。
 やがて、かたかたと小刻みに震える涙目のルカは、口の動きだけで自分を呼んだ。
 無音のそれに返事をする代わりに、唇だけを優しく触れ合わせておいた。




******





「……ほんとにマメだよね……」
 本日三度目の率直な感想を、あふ、と欠伸混じりに呟かれた。
「……」
 色々と思うところはあるのだが言い返せない。
 仕事で疲れ切っていて明日もそれなりにハードスケジュールな今をときめく御子様にご無体を働いた張本人とは、何を隠そう自分のことだ。一応の身分は御子室付きの護衛役とはいえ、一介の騎士であることに変わりはない。
 それゆえ今は色々と反省中で、勢いだったとはいえやっていいことと悪いことがあるだろうと心中でひっそりと頭を抱えていたりいなかったりする。
 汗だの何だので汚れたソファ等の後始末に必死になる傍ら、終わるまでベッド行かないし寝ないと言い張ったルカは、床に置いたクッションの上で座り込みを続けていた。
 とはいえ、見るからに眠そうなルカは、胸に抱えたもう一つのクッションに今にも顔を埋めそうである。
「ルカ。もう終わるから、ほらベッドに行こう」
「……クロアのえっち……」
「それはもういい」
 半眼のツッコミに応えるように、ぽふん、とルカの頭がクッションに沈んだ。そのまま動かなくなる。
「ルカ。ほら、ルカ。ベッドまで運んでやるから、ちょっとだけ起きてくれ」
「んむ……」
 ほとんど眠りの世界にいるらしいルカからどうにかクッションを引き抜くと、支柱を失ったようでぐでんと寄りかかってきた。
 どうにか体勢を整え、ルカを両腕に抱えて立ち上がる。
 ベッドまでの道程は数十歩程度。それほど重くはない身体を、あまり揺らさないようにと歩いていく。
 ところで現在のルカは無地の白いTシャツ一枚であったりする。下着は……下はどうだかわからないが、上はつけていないようだ。だって透けてるし。
 いや、これは単純にルカの顔を見ようとしたら一緒に視界の隅に映ったために判明した事実で、つまり不可抗力以外の何物でもなく、別にじっくり眺めていたわけでは断じてない、確かにルカに対してえっちな下心を持っていないわけじゃないがだからってそこまでがっついたりはしていないというか――
(――って、……俺は誰に何を言い訳してるんだ)
 ベッドまで辿り着いたあたりでようやく我に返った。……まあ、正直俺もだいぶ眠いしな。うん。
 ルカをそっとシーツの上に横たえる。しっかりと布団をかけてやると、むにゃむにゃと口元が動いたが、それだけだった。すぐに規則的な寝息が聞こえてくる。
「……おやすみ、ルカ」
 ようやく目のやり場に困らなくなったルカの額に遠慮無く口付けて、片付けを終えた部屋を後にした。






 なんていうか正直すまんかった。
 でもいちばんわるいのは煽ってきた無駄に萌えすぎる元ネタの中の人とクロアの中の人だとおもいます(こら)

 ともあれ大変良い萌えをありがとうございまスライディング土下座ー!(ずしゃあ)

(2009/07/12 up)

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