「中出しとはやってくれるな」
「……、すまなかった」
 言い訳をするならいくらでもできたが、さすがにそれは情けないを通り越して最低というものだろう。
 明らかに人間ではないこの女が、人と同じように妊娠するのかどうかもわからなかったが、それでも、己を律しきれなかったことには変わりないのだから。
「まあ、初めてだったわけだしな。大目に見てやろう……と言いたいところだが」
 C.C.は「初めて」の部分だけを故意に強調しつつ、ベッドの端に座る俺を寝転がったまま睨み上げてきた。
「最後のあれだけはいただけないな」
 最後? ……ああ、あのことか。
「女性の秘密をそう軽々しく口にするもんじゃない」
「共犯者でもか? 他人に秘密にすべきことを共有するのが「共犯者」だろう?」
 それが屁理屈だということはわかっていた。そもそも、「それ」を秘密にしたいのは俺ではなくC.C.の方なのだ。
 まあ、俺にとっても他人に話していい内容でないことは確かだが。
「言い方を間違った」
 C.C.は小さくため息らしきものをついてみせた。そうして、苦笑を浮かべる。
「私の本当の名前のことで、お前は私と秘密を共有したつもりなのかもしれないが――それは普通、「弱みを握る」と言わないか?」
 ……確かに。確かにそうだ。
 そう、これはC.C.に対する俺のアドバンテージだ。何をしても死なない、ギアスすら効かない相手に対して、俺が唯一持っている強み。だが――
「そんなつもりはない。仮に弱みだとして、俺はそんなものに頼るつもりは――」
「ほう? ならば今後一切、その名を口にしないというのだな?」
 そうきたか。俺は反射的に、「いつものように」この女の嫌味に応対した。
 ……はずだったのだが。
「ならばC.C.。俺がもう二度とその名で呼ばなくていいというのか?」
 C.C.はぽかん、とした表情でこちらを見た。
 何度か唇が動く。だが言葉にはならなかった。
 そして――腹を抱えて笑い出しやがった。
「おまえがそうまで自惚れが過ぎているとは思わなかった」
 ……くそ。頭の回転がまだ鈍いままなのか。
 平時だったらこの程度の嫌味、難なくかわせたはずだ。……さっきの行為がまだ尾を引いているのか。
「そうだな。私ばかりが弱みを握られているのは不公平だ。私もあとでお前の秘密を持つことにしよう」
「そんなもの、お前は既に持っているだろう」
「そんなことはない。私が全てを知っていると思ったら大間違いだ」
 にやにやと面白そうに断言すると、C.C.は寝転がったまま大きく伸びをした。
 そろそろ寝るか、と呟いてから、面白がるような声はそのままに続けてくる。
「共犯者になった記念だ。今日だけおまえに枕を使わせてやる」
「枕? 枕ならいつも使っているだろう」
 そうじゃないと言って、C.C.が身体を起こした。そして俺の寝るスペースを作るようにベッドの上を移動する。
「さあ寝ろ、ルルーシュ」
「……本当におまえは人の話を聞かないな」
「いいから寝ろ。私だって寝たいんだ」
 反論するだけ無駄だと思い、俺は言われたとおりベッドに寝転んだ。……相変わらず狭い。
 よし、と呟いてC.C.も横になった。しかも何故か、やたらと俺の側に寄っている。
「おい。せめて半分は場所を寄越せといつも言っているだろう」
「こっちを向けルルーシュ」
 ぐいぐいと引っ張られた俺は身体を転がされ、C.C.に背を向けていた姿勢を真逆にすることになった。
 結果、ベッドの真中あたりで、俺とC.C.は妙に近い距離で向き合う。
「今度は何……な、おいっ」
「ほら腕を回せ。そうでないと枕にならない」
 ずりずりと寄ってきたC.C.は、そんなことを言いながら俺に身体を密着させた。
「ま……まさか、枕というのは」
「抱き枕だ。今夜だけ、私を抱き枕にすることを許可してやる」
 この女の頭は大丈夫か、と一瞬本気で思った。ふざけるのにも程がある。目眩がしてきた。
「……俺は、抱き枕は使わない派だ」
「なら今日は使うといい。おまえも抱き枕の良さが理解できるかもしれないぞ?」
 したくもない。
 だいたい、抱き枕というのはこう布と綿とかでできているものだろう。それに抱き枕というのは腕や足でしがみつくものではないのか。人間――厳密にはこいつは人間ではないかもしれないが今はそんな細かいことはどうでもいい――そのものを枕に使うとは聞いたことが――
「……って、おい」
 反論を考えているうちに、C.C.はすーすーと寝息をたてていた。
 寝ている時だけは人畜無害そうな顔をする。くそ、最後まで一方的な女め……!
「……」
 俺はそろそろと腕を動かした。
 柔らかな肢体に手を触れさせ――しかし眠っている相手を引き寄せる気にならず、自分の身体をゆっくりと屈めていく。
(これで、いいのか……?)
 何度かもそもそと動いてみたがよくわからない。とりあえずこれでいいことにした。
 仕方なく目を閉じてみる。
(……起きたら節々が痛みそうな姿勢だぞ、これは)
 抱き枕の良さなど何一つわからないだろうと思いながら、俺はやがて意識を手放した。






 この前のルルCは狐と狸の化かし合いで愛なんて存在してないぞ(彼らが自覚してるレベルでは)というのを目標にしたので一切のちゅーを禁止してたんですが、今回はこの前よりも少しはいちゃこいてるルルCを目指したゆえちゅー解禁できて大変満足です。

 もう一度ルルCやりたいけど難しいよなーと思ってたら、#15ラストにおけるルルの手の握り方でそんなこたどーでもよくなりました。
 もうね、何でおま躊躇気味に指先だけで触れてからぎゅってしてんのさ! してんのさ!!(ばんばん)
 ともあれ例によって色々が偽くさいのはデフォルトなので全力で(以下略)

 前回に引き続きさらに胸傷痕ネタを引っ張ってすいません。
 でもルルは平常心を取り戻そうと無駄に色々冷静に考えようとした挙句いらんことに気が付いたり思い至ったりして逆にガチガチになったりしてればいいとおもうんだ(最低だ)

(2007/07/22 up)

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